8月から高卒求人が本格的に動き始め、夏休みに入ると「職場見学」を実施する企業も増えてきます。特に8月は、高校生が実際の職場を見て応募先を考える大切な時期です。
一方で、初めて高校生を受け入れる企業からすると、「何を見せればいい?」「誰が案内する?」「どこまで質問していい?」と迷うことも多いのではないでしょうか。
職場見学で高校生が見ているのは、会社説明の内容だけではありません。玄関ですれ違った社員の挨拶、作業している人の表情、制服や作業着、社員同士の話し方、休憩スペースの雰囲気まで、高校生は意外と細かいところまで見ています。
採用担当者がどれだけ丁寧に説明しても、現場で社員同士が強い口調で話していたり、見学者に気づいても誰も挨拶をしなかったりすると、「ここで働いて大丈夫かな?」という印象につながるかもしれません。
今回は、初めて高校生の職場見学を受け入れる企業に向けて、見学前に準備しておきたいポイントと当日の注意点を紹介します。
高校生は「説明」より職場の空気を見ている
応募前職場見学は、高校生が求人票だけでは分からない会社の「普段の姿」を確認する時間です。特に初めて会社を訪問する高校生にとって、社員の様子はそのまま「自分が入社した後の姿」を想像する材料になります。
立派な会社案内を作ることよりも、まずは普段の職場を一度見渡してみましょう。「初めて来た高校生から見たらどう見えるか?」という視点を持つだけでも、準備すべきことが見えてきます。

受け入れる企業側としては、高校生が職場見学でどこに注目しているのかを知っておくことも大切です。
前回の記事「職場見学の前に準備することは?当日に心がけるべきポイントも解説」では、学生の視点から、職場見学に向けて高校生が事前に準備することや、当日に意識したいポイントを紹介しています。学生側がどのような点を意識して職場見学に参加するのかを知っておくことで、より高校生に伝わりやすい職場見学の準備につながります。
職場見学の前に企業が準備すべきこと
1.まず社内全体に「高校生が来る」と共有する
職場見学は採用担当者だけのイベントではありません。高校生が通る部署の社員にも、見学日・時間・人数・見学ルートを事前に共有しておきましょう。
朝礼や社内チャットで「今日は高校生が職場見学に来ます。すれ違ったら普段通り挨拶をお願いします」と一言伝えるだけでも十分です。何も知らされていない社員が驚いた顔をしたり、「誰?」「何しに来たの?」と周囲で話したりすると、高校生も居心地の悪さを感じてしまいます。

2.社員の服装・身だしなみを一度チェックする
職場見学の日だけ全員がスーツを着る必要はありません。工場なら作業着、オフィスなら普段の仕事着など、実際に働くときの服装を見てもらうほうが仕事をイメージしやすくなります。
ただし、「普段通り」と「だらしなく見える」は別です。制服や作業着の汚れや破れ、ボタン、名札、靴、髪型など、最低限の清潔感は確認しておきたいところです。安全具が必要な現場であれば、ヘルメットや安全靴を正しく着用している姿そのものが、会社の安全意識を伝えることにもなります。
強すぎる香水やたばこのにおいなども、人によっては気になるポイントです。特別に着飾る必要はありませんが、「初めて会社に来る人を迎える日」という意識は社内で共有しておきましょう。
また、服装自由の職場でも、素足で靴を履くなどカジュアルすぎる格好は避けましょう。普段は靴下を履かない社員がいる場合も、見学当日は着用を促すなど、来客を迎える場としての身だしなみを社内で意識することが大切です。」と整理すると自然です。

3.挨拶・表情は思っている以上に見られている
高校生にとって、受付に入った瞬間から職場見学は始まっています。すれ違う社員が「こんにちは」と自然に挨拶してくれるだけでも、会社の印象は大きく変わります。
もちろん、仕事中の社員が全員笑顔でいる必要はありません。ただ、見学者をじろじろ見る、挨拶されても返さない、面倒そうな表情をする、といった態度は想像以上に目につきます。
「採用担当者は優しかったけれど、現場の人が怖そうだった」という印象を持たれてしまうと、会社説明で伝えた魅力が届きにくくなります。

4.社員同士の言葉遣い・会話にも注意する
見学中は、案内担当者の説明だけでなく、社員同士の会話も自然と耳に入ります。大声で叱る、乱暴な言葉を使う、誰かの悪口を言うといった場面は、当然ながら会社の印象に直結します。
特に気をつけたいのが、社員にとっては軽い冗談でも、高校生には本気に聞こえる言葉です。
例えば「うち、忙しいと帰れないよ」「この仕事きついからすぐ辞めるよ」「若いんだから何でもできるでしょ」といった言葉は、冗談のつもりでも不安を与えてしまいます。
仕事の大変さを隠す必要はありません。ただし、「繁忙期は忙しくなりますが、チームで分担しています」のように、事実と会社の対応をセットで伝えると、高校生にも働き方が伝わりやすくなります。
あわせて、専門用語は避け、高校生にも伝わる言葉に言い換えるよう意識しましょう。」と段落をまとめるのがおすすめです。
5.見学者の前での普段の行動も見直す
案内中に私用スマートフォンを見続ける、見学者の前を無言で横切る、通路に荷物を置いたままにするなど、小さな行動も会社の雰囲気として伝わります。
逆に、社員同士が自然に声を掛け合っている、安全確認をきちんとしている、困っている人を手伝っているといった場面は、説明しなくても職場の良さが伝わります。
見学のために完璧な職場を演出する必要はありません。普段の仕事の中で「初めて来た人にどう見えるか」を少し意識することが大切です。
6.若手社員・高卒入社の先輩にも協力してもらう
可能であれば、人事担当者だけでなく、実際に現場で働く若手社員にも話してもらいましょう。特に高卒で入社した先輩がいる場合は、高校生にとって働く姿をイメージしやすい存在です。
「入社前に不安だったこと」「最初に覚えた仕事」「今担当している仕事」など、実際に経験した内容を短く話してもらうだけでも会社への理解が深まります。
ただし、当日に突然社員へ話を振るのではなく、事前に趣旨と話してほしい内容を共有しておきましょう。

7.見学ルートと休憩スペースも確認する
工場、倉庫、建設現場などでは、安全対策が最優先です。立入禁止区域、機械の稼働範囲、足元の危険、車両の出入りなどを事前に確認し、安全に見学できるルートを決めます。
ヘルメットや安全靴などが必要な場合は、企業側で用意するのか、高校生に持参してもらうのかを事前に学校へ伝えておきましょう。写真撮影ができない場所や機密情報が見える場所についても、社内で確認が必要です。
休憩室や食事スペースを案内する場合は、テーブルの上に私物やごみが残っていないかも確認しておきましょう。大がかりな掃除をする必要はありませんが、「毎日ここで休憩するならどう感じるか」という目線で見直すことがポイントです。

当日は会社説明を長くしすぎない
高校生が知りたいのは、会社の沿革や売上だけではなく、「実際にどんな人が、どんな場所で、どんな仕事をしているのか」です。
例えば、「製品を作っています」と説明するだけでなく、実際の作業を見せながら「入社1年目はこの工程から覚えます」と伝えると、仕事内容を具体的にイメージできます。
社員の服装、仕事中の表情、上司と部下の距離感、休憩の取り方なども、高校生にとっては重要な情報です。会社側が「これは普通だから説明しなくても分かる」と思っていることほど、高校生には新鮮な情報かもしれません。

職場見学を「面接」にしないよう注意
最後に、応募前職場見学をそのまま面接のような場にしないよう注意しましょう。
高校生が熱心に話を聞いてくれると、「うちに応募してくれる?」「志望度はどのくらい?」と聞きたくなるかもしれません。しかし、選考開始前の職場見学では、応募意思を確認するより、仕事内容や職場について知ってもらうことを優先しましょう。
愛知県でも、選考開始期日前の応募前職場見学では、採用選考に直接つながる質問や、内定と受け取られるような話をしないよう示されています。詳しいルールは愛知労働局の資料で確認できます。高卒採用全体の日程については厚生労働省の案内も参考にしてください。

見学後は社内でも振り返る
職場見学が終わったら、「無事に終わった」で終わらせず、担当者同士で簡単に振り返りましょう。
説明が長すぎなかったか、高校生が質問しやすい雰囲気だったかだけでなく、「挨拶できていたか」「見学中に気になる言動はなかったか」「現場がどう見えていたか」も確認します。学校から質問や要望があった場合も記録しておけば、次回の受け入れ改善につながります。
また、学校から「職場見学確認書」などの記入を依頼されている場合は、忘れず対応しましょう。

まとめ:職場見学は入社後のミスマッチを減らす第一歩
初めて高校生を受け入れると、「会社説明をしっかり準備しなければ」と考えがちです。しかし、高校生が持ち帰る会社の印象は、説明資料だけで決まるものではありません。
玄関で交わした挨拶、現場で働く社員の表情、作業着の着こなし、社員同士の話し方。そうした何気ない一場面が、「この会社で働いてみたい」「自分には少し合わないかもしれない」と考える材料になります。
見学前には担当者だけでなく社内全体へ一言共有し、身だしなみ、挨拶、言葉遣い、見学ルートを確認しておきましょう。特別によく見せる必要はありません。普段の会社の姿を、高校生が安心して見られる状態に整えておくことが、職場見学で一番大切な準備です。