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住民税を少しでも抑えるには?新社会人が知っておきたい控除と申請方法

「住民税は、働き始めた翌年から負担が大きくなる」と聞いて、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

前回の記事では、住民税がどのような税金なのか、いつから支払いが始まるのかを紹介しました。今回はその続きとして、住民税の負担を適切に抑えるための「控除」について解説します。

控除は、税金を払わなくてよくなる裏技ではありません。医療費を多く支払った場合や、将来に向けて一定の制度を利用した場合などに、税金を計算する基になる所得を少なくできる仕組みです。

高校卒業後に働き始める人にも関係する制度があるため、早めに知っておきましょう。

目次

そもそも「控除」とは?

住民税は、受け取った給与の全額にそのまま税率をかけて計算するわけではありません。

給与収入から「給与所得控除」や「所得控除」を差し引き、残った課税所得を基に税額を計算します。

簡単に表すと、次のようなイメージです。

  給与収入 − 給与所得控除 − 所得控除 = 税金を計算する基になる所得

差し引ける控除が増えると課税所得が小さくなり、結果として住民税も軽くなる可能性があります。

ただし、「10万円の控除を受けたら、税金が10万円戻る」という意味ではありません。住民税の所得割は多くの地域で合計10%前後なので、10万円の所得控除によって減る住民税は、おおよそ1万円が目安です。実際の金額は住んでいる自治体や所得によって異なります。

会社員なら自動的に適用される控除

給与所得控除

会社員は、仕事に必要なスーツや靴、文房具などを購入することがあります。しかし、会社員が一つひとつの仕事道具を必要経費として申告するのは大変です。

そこで、給与収入に応じた一定額を必要経費のように差し引く「給与所得控除」が設けられています。基本的には会社が行う給与計算や年末調整に反映されるため、自分で申請する必要はありません。

基礎控除

基礎控除は、合計所得金額などの条件を満たす人に適用される基本的な所得控除です。一般的な新社会人であれば、会社へ必要書類を提出することで年末調整に反映されます。

そのため、給与明細に控除名が書かれていなくても、何も控除されていないとは限りません。

新社会人が確認したい控除

1.iDeCoの掛金による控除

iDeCoは、自分で掛金を積み立てて老後の資産を準備する私的年金制度です。支払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になり、所得税と住民税の負担を軽くできます。

例えば、毎月1万円を積み立てた場合、年間の掛金は12万円です。課税される所得が十分にある人なら、住民税だけで年間およそ1万2,000円軽くなる計算です。さらに、所得に応じて所得税も軽減されます。

ただし、iDeCoのお金は原則として60歳まで引き出せません。就職したばかりの時期は、引っ越し代、車の購入費、急な病気などでお金が必要になることもあります。

税金を減らすことだけを目的に無理な金額を積み立てず、まずは生活費の3~6か月分を目安に貯金を準備してから検討しましょう。

2.医療費控除

1月1日から12月31日までに、自分や同じ家計で生活している家族のために支払った医療費が多い場合は、医療費控除を利用できる可能性があります。

控除額は、基本的に次のように計算します。

支払った医療費 − 保険金などで補てんされた金額 − 10万円

ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が基準になります。

新社会人は4月から12月までの収入で計算されることが多く、所得が200万円未満になるケースもあります。そのため、「医療費が10万円を超えていないから対象外」と決めつけず、自分の所得も確認してみましょう。

治療のための通院費や公共交通機関の交通費、一定の歯科治療なども対象になる場合があります。一方、美容目的の施術や健康診断だけの費用などは、原則として対象になりません。

3.セルフメディケーション税制

病院へ行く機会は少なくても、ドラッグストアで風邪薬や痛み止めなどを購入する人はいるでしょう。

健康診断や予防接種など、健康を守るための一定の取り組みを行っている人が、対象となる市販薬を年間1万2,000円を超えて購入した場合、超えた部分を所得から差し引ける可能性があります。控除額の上限は8万8,000円です。

対象商品は、レシートに「セルフメディケーション税制対象」などと記載されていることがあります。普通の医療費控除と同時には利用できないため、両方の条件を満たす場合は有利な方を選びます。

4.勤労学生控除

高校や大学、専門学校などに在学しながら働いており、所得などの条件を満たす場合は、勤労学生控除を利用できることがあります。

卒業後は基本的に対象外ですが、在学中に就職した場合や、進学しながら働く場合には確認しておきたい制度です。対象となる学校や所得に条件があるため、学校や税務署、自治体の窓口で確認しましょう。

5.仕事のために多額の費用を自己負担した場合

会社員が仕事のために次のような費用を多く自己負担した場合、「給与所得者の特定支出控除」を利用できる可能性があります。

・通勤費
・転勤に伴う引っ越し費用
・仕事に必要な研修費
・仕事に直接必要な資格取得費
・単身赴任先から自宅へ帰るための交通費
・仕事に必要な書籍、衣服、交際費など

ただし、会社から補助された金額は一定の条件により対象にならず、支出額が給与所得控除額の2分の1を超えるなど、適用のハードルは高めです。勤務先の証明も必要になるため、一般的な新社会人が利用できるケースは多くありません。

資格取得や研修に大きなお金を使う予定がある人は、支払う前に会社の補助制度がないか確認し、領収書も保管しておきましょう。

条件に当てはまる人が利用できる控除

このほかにも、本人や家族の状況によって利用できる控除があります。

・本人や扶養家族が一定の条件を満たす場合の「障害者控除」
・ひとり親で一定の条件を満たす場合の「ひとり親控除」
・配偶者がいる場合の「配偶者控除・配偶者特別控除」
・災害、盗難、横領などで生活に必要な財産へ損害を受けた場合の「雑損控除」
・住宅ローンを利用して一定の住宅を購入した場合の「住宅ローン控除」

これらは誰でも自由に使えるものではなく、それぞれに細かな条件があります。自分に関係がありそうな場合は、年末調整の書類を提出する前や確定申告の時期に確認してください。

NISAを始めると住民税は安くなる?

新社会人向けの資産形成として、NISAを目にする機会も増えています。しかし、NISAへお金を入れても、給与にかかる住民税が直接安くなるわけではありません。

NISAは、口座内で得た一定の配当金や売却益が非課税になる制度です。一方、iDeCoは掛金が所得控除の対象になるため、現在の所得税や住民税を軽くできる可能性があります。

・NISA:運用で得た利益に税金がかかりにくくなる
・iDeCo:掛金を所得から差し引けるが、原則60歳まで引き出せない

どちらが優れているというより、お金を使う目的と時期が違います。就職直後は、必要なときに引き出せる貯金を優先することも大切です。

控除を受けるにはどうすればいい?

控除は、会社の年末調整で手続きできるものと、自分で確定申告が必要なものに分かれます。

年末調整で手続きする主な控除

・生命保険料控除
・地震保険料控除
・給与から引かれていない社会保険料の控除
・iDeCoの掛金に関する控除
・扶養控除や配偶者控除など

会社から配られる申告書に記入し、保険会社や関係機関から届いた控除証明書を提出します。提出期限を過ぎると、会社の年末調整に間に合わないことがあるため注意しましょう。

確定申告が必要になる主な控除

・医療費控除
・セルフメディケーション税制
・給与所得者の特定支出控除
・雑損控除
・ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合
・住宅ローン控除の初年度など

所得税の確定申告をすると、その内容は住民税の計算にも反映されます。

なお、ふるさと納税のワンストップ特例を申請していても、医療費控除などのために確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。この場合は、ワンストップ特例を申請した寄附分も含め、すべてのふるさと納税を確定申告へ記載しなければなりません。

新社会人が特に注意したい4つのポイント

1.住民税は前年の所得を基に計算される

住民税は、前年1月から12月までの所得を基に計算され、会社員の場合は原則として翌年6月から給与天引きが始まります。

高校卒業後の4月に就職し、前年のアルバイト収入が少なかった人は、入社1年目に住民税がほとんど引かれないことがあります。しかし、入社後の給与に対する住民税は2年目の6月から始まるため、手取りが急に減ったように感じることがあります。

1年目から毎月少しずつ取り分けておくと安心です。

2.ふるさと納税の上限を月給の12か月分で計算しない

4月入社の場合、その年の給与は基本的に4月から12月までの分です。ふるさと納税の控除上限を調べるときに、「月給×12か月」で年収を見積もると、実際より高い上限が表示される可能性があります。

賞与や残業代も含め、その年に実際に受け取る見込みの給与収入で計算しましょう。

3.控除のために不要な支出を増やさない

税金が安くなるとしても、支払った金額が全額戻るわけではありません。

例えば、控除を受けるためだけに不要な保険へ加入したり、必要のない商品を購入したりすると、減る税金より支出の方が大きくなります。「必要な支出をした結果、使える控除がないか確認する」という順番で考えましょう。

4.証明書やレシートを保管する

控除を受けるには、控除証明書、医療費の明細、薬局のレシート、寄附金受領証明書などが必要になる場合があります。

紙の書類を一つのファイルにまとめるか、スマートフォンで撮影して保存しておくと、年末調整や確定申告の時期に慌てずに済みます。

まとめ

住民税には、給与所得控除や基礎控除のように基本的に自動で反映されるものだけでなく、iDeCo、医療費控除、セルフメディケーション税制など、自分で手続きをしなければ利用できない制度もあります。

新社会人の場合、まずは生活に必要な貯金を確保し、そのうえで自分がすでに支払った費用や利用している制度に対象となる控除がないか確認することが大切です。

控除を正しく利用すれば、払い過ぎを防ぎながら、お金と税金について考えるきっかけにもなります。年末調整の書類や確定申告を「難しそう」と放置せず、分からないことがあれば勤務先の担当者、税務署、住んでいる市区町村の税務窓口へ相談しましょう。

※本記事は2026年8月時点の制度を基に作成しています。控除の条件や金額は変更される場合があります。

参考資料