
せっかく内定を出しても、入社前に辞退されてしまう——そんな悩みを抱える企業が増えています。
学生が複数の企業から内定を得ることが一般的になり、入社までの期間に適切なフォローがないと、他社へ流れてしまう可能性が高くなっています。
そのようなリスクを減らすために重要なのが「内定者フォロー」です。
この記事では、内定者フォローの目的、実施するべき具体的な施策、成功のポイント、注意すべき落とし穴について、採用担当・人事向けにわかりやすく解説します。
実際の現場で役立つ内容に絞ってお伝えします。
内定者フォローとは?目的は「不安解消」と「入社意欲の向上」

内定者フォローとは、学生に内定を出してから実際に入社するまでの期間に行う、サポートや関係構築のための活動を指します。
この期間、学生は「期待」と「不安」の両方を抱えており、企業との接点が薄いと「入社して大丈夫だろうか?」と不安が強まり、最悪の場合、内定辞退に至ってしまいます。
主な目的:
■ 不安や孤立感の解消:社会人になることへの漠然とした不安、周囲との比較による迷いを軽減します。
■ 志望度・愛着の向上:企業の理念や風土、働く社員の雰囲気を伝えることで「この会社に入りたい」と思わせる。
■ 他社への流出防止:他社と比較するなかで、自社の魅力が伝わるよう積極的にアプローチ。
■ 入社後の早期離職を防ぐ:リアルな社内情報を伝えることで、ギャップを減らし、ミスマッチを防ぎます。
たとえば、「内定を出した後、一度も連絡を取っていない」「入社式までフォローがない」といった対応では、学生の不安は増すばかりです。
継続的な関係づくりが、辞退防止・定着率向上に直結します。
内定者フォローで「何をすればいいの?」

目的に応じた内定者フォロー施策の例を、3つのカテゴリに分けて紹介します。
1. 情報提供・コミュニケーション
定期的な情報発信
企業の近況、代表メッセージ、部署紹介、社内報などをメールや郵送で月1回程度届けましょう。
学生は企業の動きが分からないと不安になりやすいため、「動いている会社」「つながっている感覚」を演出するのが効果的です。
チャットツールの活用
LINEやSlackで「内定者専用グループ」を作成し、日常的なやり取りができる環境を整えるのも有効です。
連絡手段がメールのみだと堅くなりがちですが、チャット形式にすることで親近感が増し、質問も気軽に行いやすくなります。
個別面談・ヒアリング
月に一度、採用担当が10〜15分の短いオンライン面談を設定するだけでも、内定者の不安や温度感を把握できます。
「話を聞いてくれる人がいる」という安心感は、入社意欲を高める大きな要素になります。
2. 社内とのつながりづくり
懇親イベントの実施
オンラインまたは対面での内定者懇親会を実施しましょう。
ゲームや座談会、グループワークを交えながら、内定者同士・先輩社員・配属予定部門とのつながりを作っていきます。
初対面で緊張しがちな学生も、少人数でのブレイクアウトセッションなどを活用すれば参加しやすくなります。
先輩社員との交流会
「一番不安なことは何ですか?」と聞くと、学生は「職場の人とうまくやれるか」や「配属後の仕事についていけるか」といった悩みを持っています。
そこで、若手社員や同じ学校出身者との交流機会を設け、等身大の声を届けることが大切です。
メンター制度の導入
内定者1人に対して若手社員を1人つける「メンター制度」も有効です。
月に1回、自由に話せる場を設け、社内の雰囲気や働き方をリアルに伝えていくことで、「この人たちと働きたい」という気持ちにつながります。
3. 成長支援・学びの場の提供
入社前研修の実施
社会人としての基本マナーやメールの書き方、会社のルールなどをオンラインで学ぶ「入社前研修」を導入する企業も増えています。
任意参加にすることで、興味のある学生だけが負担なく学べるようにしましょう。
eラーニングや資格支援
業務に関係する基本的な資格(例:簿記、ITパスポートなど)にチャレンジする意欲がある学生には、講座費用を補助したり、学習コンテンツを提供すると、入社意欲の向上にもつながります。
キャリア形成の情報提供
先輩社員のキャリアパスを紹介する動画や座談会も効果的です。
フォローのポイントは「双方向性」と「継続性」

せっかくフォロー施策を実施しても、一方通行で終わってしまうと効果は限定的です。
以下の点を意識することで、信頼関係をより深めることができます。
双方向のコミュニケーション
アンケートやフリートークを活用して、内定者の声に耳を傾けましょう。
質問や不安にすぐ答える姿勢が、「この会社は自分を大切にしてくれている」と実感させます。
相談窓口を設けたり、匿名で意見を集める仕組みも有効です。
継続的な接点
フォローの頻度は月に1回以上が理想です。
内容は簡単な近況報告でも構いません。「忘れられていない」と思わせることが、心理的な安心感を与えます。
社風や価値観の共有
企業のビジョンや価値観を「言葉」として伝えるだけでなく、「行動」や「文化」として見せる工夫をしましょう。
押しつけや過干渉は逆効果

フォローが逆効果になることもあります。以下のような点には注意が必要です。
■ 負担になりすぎる課題や研修:卒論やバイトで忙しい時期に強制参加を求めると反発を招きます。
■ 説明不足による誤解:「聞いていた話と違う」と言われないよう、雇用条件や配属予定については明確に説明を。
■ フォローの空白期間:連絡がなければ、学生は「自分は大事にされていない」と感じ、他社へ流れてしまう可能性があります。
フォローの目的は「管理」ではなく、「信頼関係の構築」であることを常に意識しましょう。
内定者フォローは入社後の活躍を支える土台

内定者フォローは、採用活動の「終わり」ではなく、「始まり」です。
この期間にどれだけ信頼関係を築けるかが、入社後の定着や活躍を大きく左右します。
なぜ内定者フォローが必要か?
学生は内定に対する期待を持つ一方で、「この会社で本当に大丈夫かな」といった不安も抱えているものです。
企業との関わりが少ないままだと、そうした不安が膨らみ、迷いにつながってしまいます。
さらに、今は複数の企業から内定をもらうのが当たり前の時代。
他社と比較される中で、自社への意欲を保ってもらうためには、継続的にコミュニケーションをとることがとても大切です。
フォローの目的は「管理」ではなく「信頼づくり」
自社を選んでもらうためには、企業の魅力や働く環境をわかりやすく、丁寧に伝えていくことが大切です。
また、入社後のミスマッチや早期離職を防ぐためにも、現場の雰囲気や実際の働き方など、リアルな情報をあらかじめ共有しておくと効果的です。
さらに、「ここなら安心して働けそう」「何かあっても相談できる」と感じてもらえるような関係性を築くことが、信頼を育てるうえでの大きなポイントになります。
はじめから完璧でなくてOK
小さな取り組みから始めることで、着実に効果が見込めます。
たとえば:
■ 月1回の簡単なメール連絡
■ オンライン面談(10〜15分でも可)
■ 内定者同士や若手社員との交流機会
「この会社に入ってよかった」と思ってもらえるために、
企業側の姿勢・行動が問われるのが、この“入社前の時間”です。
できるところから、少しずつ取り組んでいきましょう。