
近年、少子化の影響や人材確保の難しさを背景に、「高校生の採用」に力を入れる企業が増えています。
その中でも、「職場見学」は高校生との最初の接点となる非常に重要な機会です。
企業にとっては、ただ生徒を案内するだけでなく、自社の魅力を伝え、応募意欲を高める大きなチャンスでもあります。
今回は、高校生の職場見学を受け入れる企業が押さえておきたいポイントを、目的からメリット、注意点、成功のための工夫まで、具体的に解説していきます。
職場見学の目的とは?

まず最初に、職場見学を受け入れる「目的」を明確にしておくことが大切です。
単に“見せて終わり”になってしまっては、せっかくの機会も活かせません。
高校生は社会経験が少なく、将来の働き方や仕事のイメージがまだ固まっていない段階です。
そんな彼らに、現場で働く社員の姿や仕事の様子を“リアル”に感じてもらうことで、「自分にもできそう」「この会社で働いてみたい」と、将来をイメージするきっかけを与えることができます。
一方で、企業側にとっても生徒の人柄や姿勢を見ることができるため、面接前に相手の雰囲気を知る貴重な機会となります。
さらに、学校や先生と信頼関係を築くことで、長期的な人材確保にもつながる重要な取り組みです。
職場見学による企業側のメリット・デメリット

メリット
自社の魅力を“直接”伝えられる
Webサイトや求人票では伝えきれない会社の雰囲気や社員の人柄を、実際に見せることで印象に残ります。
高校生は情報収集力が十分でない場合も多く、どの会社が自分に合っているのか迷っているケースも少なくありません。
「社員が笑顔で働いている」「挨拶がしっかりしている」といった何気ない場面が、高校生の心を動かす要因になります。
ミスマッチを減らせる
実際に現場を見たうえで応募・入社することで、「思っていたより力仕事が多かった」「人と話す仕事だったのが意外だった」など、入社後に気づくギャップを事前に回避できます。
また、入社後に後悔しにくくなるため、モチベーションや定着率の向上も期待できます。
学校や地域との信頼関係ができる
定期的に職場見学を受け入れている企業は、学校側からの信頼も厚くなり、次年度以降も紹介を受けやすくなります。
とくに進路指導の先生からの評価は、今後の採用活動に大きく影響します。
社内の意識向上にも効果あり
「見学対応=お客様対応」として社員が意識を高めるきっかけにもなり、整理整頓や接遇マナーが社内に定着する効果も期待できます。
また、若手社員が生徒対応に関わることで「後輩を迎える」という意識が芽生え、自分の仕事を改めて見直す良い機会にもなります。
デメリット(注意点)
準備や対応に時間がかかる
案内資料の作成、見学ルートの調整、社員のスケジュール確保など、社内調整に手間がかかるため、事前の準備が必要です。
特に中小企業では、人員に余裕がなく、通常業務との兼ね合いで見学対応のスケジュールを確保するのが難しいこともあります。
そのため、事前に余裕を持ったスケジューリングと、全社的な協力体制の理解が必要になります。
対応が不十分だと逆効果に
職場が散らかっていたり、社員の対応が不親切だった場合は、生徒だけでなく学校側からも悪い印象を持たれる可能性があります。
生徒や先生は、企業の見学対応を通じて「この会社に生徒を任せて大丈夫か」を見極めています。
■ 整理整頓されていない
■ 社員が無愛想である
■ 案内が場当たり的である
といった印象は、企業全体のイメージダウンにつながる恐れがあります。
応募に必ずつながるとは限らない
見学に来た生徒が必ず応募するわけではありません。
あくまで“きっかけづくり”と考えることが重要です。
生徒は複数の企業を比較検討している場合が多く、むしろ“比較対象のひとつ”として見られている可能性もあります。
だからこそ、「応募につながる体験にする工夫」が求められます。
職場見学を受け入れる際の注意点

安全管理と清掃の徹底
見学ルートになる現場は、安全面と衛生面に十分配慮しましょう。
機械の可動エリアや段差、通路の確保など、「高校生が歩く」という目線で見直すと改善点が見つかりやすくなります。
とくに製造業や倉庫業など、危険を伴う作業現場では、見学者の動線を確保したうえで、万が一に備えてヘルメットや安全ベストを着用させるなど、安全対策を徹底しましょう。
社員への情報共有をしっかりと
当日案内を担当する社員には、生徒の人数、学校名、どんな仕事を紹介するかなど、事前に情報共有しておくことでスムーズな対応が可能になります。
「なぜその高校が見学に来るのか」「その高校はどんな特徴の生徒が多いか」など、先生から得られる情報をもとに簡単なブリーフィングを行うことで、当日のコミュニケーションもよりスムーズになります。
生徒目線でのわかりやすい説明を心がける
専門用語ばかりの説明は避け、できるだけ噛み砕いた表現で話すようにしましょう。
「誰でも最初は初心者」という前提で丁寧に話すことが、生徒に安心感を与えます。
たとえば、
NG例:「部品の組立て」「納品対応」
OK例:「モノを組み立てて、お客様のところへ届ける仕事」
と言い換えるだけで理解度が変わります。
見られている意識を持つ
職場見学は、企業の第一印象を決める“公開プレゼン”でもあります。
社員一人ひとりが「見られている」という意識を持って接することが大切です。
また、学校の先生は生徒以上に企業の空気感や対応の丁寧さを見ています。
見学時の一言一言が、その後の学校推薦や紹介に直結することもあるため、社員全体で「お客様対応と同等の姿勢でのぞむ」意識づけが重要です。
高校生に響く見学対応のポイント

若手社員の姿を見せる
年齢の近い社員が活躍する姿は、高校生にとって「自分もここで働けるかも」という安心材料になります。
可能であれば、若手社員に「入社のきっかけ」や「仕事のやりがい」などを話してもらう時間を設けましょう。
簡単な作業体験を取り入れる
見ているだけより、少しでも“体験”できると記憶に残りやすくなります。
梱包作業、部品の検品、簡単なPC入力など、負担の少ない範囲での体験がおすすめです。
「自分にもできそう」という手応えを感じてもらうことが、職場への親しみにつながります。
あたたかい対応が何よりの印象づけ
どんなに設備が整っていても、対応が冷たければ意味がありません。
「こんにちは」「来てくれてありがとう」といった一言が、生徒の心に残ることもあります。
見学を“歓迎されている体験”として記憶してもらうことが、将来の応募にも影響します。
資料やお土産を用意する
簡単な会社案内のチラシや、会社のロゴが入ったクリアファイルなど、ちょっとした“お土産”も印象アップにつながります。
見学後に家族や先生と話題にしやすくなり、会社の記憶が長く残りやすくなります。
見学後のフォローが次につながる
見学が終わったあとも関係を継続することが、次の応募や紹介につながります。
■ 生徒へ感想記入をお願いし、社内で共有
■ 学校へお礼の連絡を入れる
■ 今後の体験入社やインターン情報を案内する
■ 定期的に見学の機会を設ける
こうした地道な取り組みが、先生・学校・保護者からの信頼を生み、「来年もお願いしたい」という流れにつながります。
まとめ|職場見学は“未来への投資”

高校生の職場見学は、採用活動の入口でありながら、その後の企業ブランディングや人材定着にも影響を与える非常に重要な場面です。
少しの工夫と意識の違いが、応募につながるかどうかを左右します。
将来の仲間となるかもしれない高校生たちに、自社の魅力をしっかりと伝えられるよう、見学の受け入れ体制を今一度見直してみてはいかがでしょうか?