
なぜ求人を出しても応募が来ないのか?──中小企業のリアルな悩み
中小企業が求人を出しても応募がほとんど来ない、あるいは全く来ないと感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。
実際、厚生労働省の調査によると、2023年時点で中小企業の求人倍率は大企業の倍以上。
それにもかかわらず、採用に苦戦している企業が多く存在します。
では、なぜ中小企業には応募が集まりにくいのでしょうか?
知名度と情報発信の不足
中小企業は大手企業に比べて知名度が低く、そもそも求職者に存在を知られていないケースが多くあります。
求人サイトに情報を掲載していても、広告枠の規模や露出の少なさから、埋もれてしまうことも少なくありません。
また、企業のホームページが古かったり、採用ページがなかったりすると、求職者に「この会社は大丈夫だろうか」と不安を与えてしまいます。
条件面での魅力不足
給与や福利厚生、休日数といった待遇面で、大手企業に比べて見劣りしてしまう場合、求職者は自然と他社へ流れてしまいます。
特に即戦力を求める中途採用では、条件が相場より低いと感じられれば、応募を避けられてしまう可能性が高くなります。
中小企業ならではの魅力を伝える工夫や、可能な範囲での待遇改善、他社との差別化が必要です。
採用手法のミスマッチ
使用している求人媒体や採用方法が、求めている人材層と合っていないケースも少なくありません。
たとえば、若年層をターゲットにしているにもかかわらず、中高年層向けの求人媒体を使っていたり、特定の職種向けサイトで幅広い業務を募集していたりすると、効果的なアプローチにはなりません。
ターゲット層に合わせた媒体選びと、採用戦略の見直しが求められます。
地域特性と人口動態
地方の中小企業では、人口の都市部流出や高齢化が進み、そもそも働き手の数自体が不足している状況です。
特に製造業や介護業界などでは、恒常的な人手不足が続いており、求人を出しても応募がほとんど来ないという状況は珍しくありません。
こうした地域特性や人口動態を踏まえた、地元に根ざした採用戦略が必要です。
応募が来ない問題の解決方法

応募が集まらない理由はさまざまですが、解決には「問題点を特定し、適切な対策を講じること」が重要です。
ここでは、中小企業が即実践できる解決方法を、いくつかのステップに分けてご紹介します。
求職者に届く情報を発信する
まず、「自社を知ってもらう」ことが基本中の基本です。
ただ求人情報を掲載するだけでは、求人が目立たないことが多いです。
求職者は今、企業の雰囲気や文化を気にしています。
単に仕事をする場所ではなく、「ここで働きたい」と思わせるためには、次のような方法が有効です。
採用サイトやSNSを活用
採用ページを新しく作り直すだけでなく、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを使って、実際の職場の雰囲気や社員の日常を発信することで、求職者の関心を引きましょう。
写真や動画を交えたリアルな発信が、応募者の心を掴みます。
社員の声を載せる
求職者は「どんな人たちと一緒に働くのか」を重視します。
社員インタビューや、チームで達成した成果の紹介を通じて、企業の人間味を伝えましょう。
こうした情報発信を通じて、企業の認知度を高め、「ちょっと気になる企業」へと変えていくことが大切です。
求人内容の魅力を引き出す
応募が来ない原因の一つに、求人内容が曖昧であることがあります。
求職者は、どんな仕事をするのか、どんな条件で働けるのかを明確に知りたがっています。
以下のポイントを見直してみましょう
具体的な待遇の提示
給与や休暇、福利厚生など、求職者が最も気になるポイントは明確に示しましょう。
「能力に応じて」「応相談」などの曖昧な表現はNGです。
例えば、給与や賞与、福利厚生の具体的な数字を記載することが効果的です。
仕事内容を魅力的に伝える
単なる職務内容ではなく、「この仕事をしているとどんなスキルが身につくのか」「将来どんなキャリアパスが開けるのか」を伝えることが大切です。
特に成長を感じられる仕事ややりがいのある仕事にフォーカスしましょう。
働く環境や社風の紹介
実際に働いている社員の声を掲載したり、オフィスの様子を写真や動画で見せたりすると、求職者が「ここで働いている自分」を想像しやすくなります。
これらの内容をしっかりと発信することで、求職者にとって「応募してみたい」と思わせる魅力的な求人を作り上げることができます。
採用チャネルを見直す
求人広告や採用手法は、ターゲット層に最も響くものを選ぶことが成功のカギです。
応募が少ない場合、その原因は「ターゲット層へのアプローチ方法が合っていない」ことが考えられます。
以下のように、採用方法や使用するメディアを見直しましょう。
若年層向け
若者をターゲットにする場合、SNS広告や動画求人、インフルエンサーとのコラボレーションが効果的です。
また、地元の高校や専門学校と提携し、インターンシップや職場体験を通じて応募者を引き寄せる方法もあります。
中高年層向け
中高年層には、ハローワークや地域の再就職支援サービスを活用する方法が有効です。
また、経験豊富な人材に向けては、即戦力を求めるのではなく、「これから成長できる環境を提供する」といったポテンシャル採用を強調することで、幅広い層にアプローチできます。
柔軟な働き方を訴求
特に主婦層や家庭との両立を重視する求職者には、フレックスタイム制度や在宅勤務など、柔軟な働き方を打ち出すと、より多くの応募を集めることができます。
ターゲット層ごとに最適なメディアや方法を選び、効果的にアプローチすることで、採用活動の効率が大きく向上します。
応募後のスムーズなフォローアップ
応募があっても、その後のフォローが不十分だと、面接に来ないケースが多くなります。
最初の対応が応募者の印象を大きく左右するので、スピーディかつ丁寧なフォローを心がけましょう。
迅速な返答を心がける
応募後、24時間以内に返答することで、応募者の不安を解消し、興味を引き続き持たせることができます。
複数の連絡手段を使う
メールだけでなく、電話やSMSでの連絡も併用すると、確実に届きます。面接前には、応募者に仕事内容や職場環境について詳しく説明し、安心感を与えることが大切です。
面接準備をしっかり行う
面接前に企業や職務内容について詳しく説明し、応募者が安心して面接に臨めるようサポートすることも、企業としての誠実さを示すポイントになります。
ここまで、中小企業が取り組むべき応募改善の具体策をご紹介してきました。
ですが、さらに視点を変えた採用方法を取り入れることで、より大きな成果が期待できるケースもあります。
そこで次にご紹介したいのが、「高卒採用」という選択肢です。
“即戦力”を求めるのをやめてみる?──高卒採用という現実的な選択肢

求人を出しても応募が来ない――そんな状況に悩んでいる中小企業にとって、採用ターゲットを「変える」という発想が突破口になるかもしれません。
そこで、今あらためて注目されているのが「高卒採用」です。
なぜ今、高卒採用なのか?
かつては「高卒=現場作業中心」といったイメージがありましたが、現在ではその価値が大きく見直されています。
実際、2022年度の高卒者の就職希望者は約17万人。
そのうち就職率は98%以上と非常に高く、多くの企業が高卒人材の採用に成功しています。
高卒採用は、「若くて伸びしろのある人材を確保し、長く育てる」という戦略に非常に適しているのです。
中小企業にとっての高卒採用のメリット
高卒採用には、中小企業ならではの強みを活かせるポイントがいくつもあります。
企業文化になじみやすく、育成しやすい
社会経験が少ない分、柔軟性が高く、会社の方針に合わせて成長してくれる人材が多い。
長期的に働いてくれる可能性が高い
早くから職場に慣れ、段階的にスキルを習得していくことで、将来の中核人材として育てやすい。
採用コストを抑えられる
高卒採用はハローワークを通じて行うのが基本で、求人広告費や紹介手数料がかからないケースが多い。
競争が比較的穏やか
中途・大卒採用に比べて、地元高校との信頼関係を築ければ継続的に採用できる可能性が高い。
高卒採用の進め方とは?
高卒採用には特有のルールや進め方があります。成功のためには以下の点が重要です。
高校との信頼関係づくりがカギ
求人票を送るだけでなく、進路指導の先生と顔の見える関係を築くことで、紹介の可能性が高まります。
職場見学やインターンシップを積極的に
生徒や保護者が「安心して働ける環境かどうか」を見極めるための機会が重要です。
教育・キャリア制度の明示
「この会社でどう成長していけるか」を明確に伝えることが、応募への後押しになります。
まとめ:人が来ないなら、「未来の人材を育てる」発想にシフトしよう

中小企業が「求人を出しても応募が来ない」と感じる背景には、
■認知度や情報発信力の不足
■求人条件や仕事内容の魅力不足
■採用手法のミスマッチ
■地域の人口減少や高齢化
といった、複数の要因が絡んでいます。
もちろん、求人媒体を変えたり、待遇を一時的に見直したりすることも効果がないわけではありません。
しかし、それでも結果が出ない場合、「誰を採用するか」という視点そのものを変えることが必要になってきます。
その一つの答えが、「高卒採用」です。
高卒採用は、“人材不足時代”の有効な打ち手
高卒人材は、
■若くて柔軟性がある
■地元志向が強い
■将来にわたって企業を支える戦力に育ちやすい
という特徴を持っています。
中小企業にとって、「即戦力を取りに行く」のではなく、「未来の戦力を育てていく」という姿勢こそが、長期的な組織づくりの鍵となるのではないでしょうか。
今こそ、中小企業の「人を育てる力」に注目を
中小企業には、大手にはない魅力があります。
社員との距離が近く、一人ひとりをしっかり見て育てられる環境――これは若手人材にとって、非常に魅力的なポイントです。
「応募が来ない」と悩む今こそ、採用のやり方を見直し、「誰を、どう迎え、どう育てるか」という観点から新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。